2008年8月10日日曜日

宗旦狐 茶の湯にかかわる十二の短編

宗旦狐 茶の湯にかかわる十二の短編
澤田ふじ子
★★
茶道初心者〜上級者まで

茶の湯というと茶室でお抹茶を点てているイメージばかりが先行しますが、茶碗、掛け軸、茶畑などなど茶にまつわるエピソードが12個取り上げられています。

ひと昔前まで茶の湯がいかに庶民の文化に浸透していたかがわかります。

メインエピソードである「宗旦狐」は千利休の孫、宗旦に化けた狐の話。いたずらをするもののみんなに慕われていた古狐の話です。

実際に京都の相国寺には宗旦稲荷がまつられており、宗旦の人となりを知るに面白いエピソード。宗旦は祖父利休の侘び茶の精神を引き継ごうと、清貧を極めた生活を送っており時に「乞食宗旦」と呼ばれることもあったそう。揶揄される意味もあったようですが、無心無我であり禅的であると尊敬の念も同時に含まれていたそうです。

表千家、裏千家、武者小路と千家が枝分かれしていく源流にあるのが宗旦です。禅の精神をまっとうしようとしたところから発したからこそ、今でも私たちが学びを得られる文化として茶道が保たれているのかもしれません。

茶道を学んでいない人でも十分楽しめますが、下地の知識があると、各エピソードの意味合いが深まりより面白いでしょう。

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